人から馬鹿にされるもの。
崩れた土塀。あまりにもお人よしだと周囲に知られてしまった人。
画像引用:一般社団法人山口県観光連盟(https://www.oidemase.or.jp/photo-studio)
憎たらしいもの。
忙しい時にやって来て長話をする客。大したことのない相手ならば「あとでね」と追い返すこともできるけれど、さすがに目上の人に対してはそういうわけにもいかず、大変憎たらしくてイヤだ。
硯に髪が入った状態で、気付かずにすってしまった時。また墨の中に石が交じっていて、キシキシと軋み鳴るのもイヤ。
急病人が出た時に加持祈祷をする修験者を呼びに行ったところ、いつもいる場所にいない。外を探し回っている間は、とっても待ち遠しくて。待ち続けてようやく来た修験者の到着を喜んで加持祈祷させるけれど、このところ物の怪を調伏する仕事が多過ぎて疲れているのか、開始早々眠そうな声なのは腹立たしい。
どうでもいい人物が笑いながら、大げさにモノを言う時。
火鉢の火や囲炉裏などで、掌をひっくり返し裏返して伸ばしながらあぶって暖を取る人。若い人がいつそんな真似をしたって言うのかしら。逆に年老いた者たちが火鉢の縁に足まで載せて、喋りながら足を擦り合わせたりするんだから。
そういうことをする人たちは、人に家に来ても座る場所をあっちゃこっちゃ扇で煽ぎ散らしてホコリを払うし、いざ座る際にも落ち着きがなく、挙句には狩衣(かりぎぬ・一般公家の日常着、写真参照)の前の垂れたところを膝の下に巻き込んで座る始末だ。
こういうことは取るに足りない身分の者がすることだと思っていたけれども、少しは身分のある式部大夫(しきぶのたいふ・五位となった式部丞)みたいな人がしでかすのだから…
画像引用:wikipedia/See below(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8B%A9%E8%A1%A3)
また酒を飲んで喚き、口の中を指でまさぐり、髭を生やしている人はそれを撫で回し、杯を他の人に受けさせる姿はまったくもってイヤなものだ。
さらに「もう一杯飲め」と言いたいのだろうか、身を揺すって頭を振り、口元すら垂れ下って、子供が「知事の屋敷に伺って~」と童謡を歌うような素振りをする。
しかもそれを実に高貴な人がやっていたのでホント幻滅した。
他人を羨み、自分の身の上を嘆き、人の噂話をし、根掘り葉掘り知りたがり、聞きたがる。教えてやらねば逆恨みまでする。
また僅かに耳にしたことを、まるで自分が最初から知っていたかのように他人に話して聞かせる。これも大層憎たらしいものだ。