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第29段◆こころときめきするもの

  平安女性のトキメキ事情

必読ものづくし

心がドキドキするもの。

スズメのヒナを飼うこと。子供が遊んでいるところを通りかかるとき。高価なお香を焚いて、ひとりでゴロ寝しているとき。唐鏡(とうきょう・中国製の鏡)を覗きこんだら、少し曇って暗くなっているとき。

(※古代中国には日食や月食があると曇る宝の鏡があった)

身分が高そうな男が、家の前に車を停めて、使いの者を用件伺いに行かせたとき。

スズメ
▲心ときめきするもの。雀の子飼。

髪を洗って、化粧もして、フレグランスが香る服を着たとき。特に誰かと会う予定ではなくとも、心の中はとっても幸せモード。

彼氏が来るのを待つ夜。雨音や風の音でさえも、待ち人が来たのかとドキッとしてしまう。

シャンプーする女性
▲頭洗ひ化粧じて香ばしうしみたる衣など着たる。

第30段◆すぎにしかた恋しきもの

  ちょっぴり感傷的に

ものづくし

過去を恋しく思い出すもの。

葵祭(あおいまつり・御所を出発した行列が下鴨神社を経て、上賀茂神社へ向かう。賀茂祭)の日に使って、枯れてしまった葵の葉。
人形遊びの道具。二藍(ふたあい・写真参照)や葡萄染(えびぞめ・写真参照)の端切れが、押し潰されて本に挟まっているのを見つけたとき。

元カレからもらった手紙を、雨が降って手持ちぶさたな日に探し出して読み返すのも。
去年の夏に使った扇。

二藍・葡萄染
▲二藍、葡萄染などのさいでの押しへされて、草子の中などにありける見つけたる。

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