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第42段◆あてなるもの

  簡潔で清々しい

必読ものづくし

品があるもの。

薄色(うすいろ・第36段の写真参照)に白い重ね着をした汗衫(かざみ・女児の上着)姿。
カルガモの卵。削った氷にあまづら(ツタの樹液を煮詰めたシロップ)を入れて、新しい金属のお椀によそったもの。

水晶の数珠。藤の花。梅の花に雪が降りかかったようす。
とっても可愛いちびっ子が、イチゴなどを食べているところも!

かき氷ののぼり
▲削り氷のあまづら入れて、新しき鋺に入れたる。

第43段◆虫は

  これも有名な段

必読ものづくし自然

虫だったら、ステキだなと思うのはスズムシ。ヒグラシ。ちょうちょ。マツムシ。コオロギ。キリギリス。ワレカラ(海藻に付着する小さな節足動物)。カゲロウ。ホタル。

ミノムシ(写真参照)はなんだかとってもしみじみ。
鬼が生んだ子なので、親に似てこの子も鬼の恐ろしい本性があるのだろうと、親がみすぼらしい着物を子に着せて、
「もうすぐ秋風が吹く季節になるからね。そのとき迎えに来るから待っててね」
と言い置いて親は逃げてしまうの。
そうとも知らず、子は秋風の音を聞いて八月ぐらいになると、
「父よ、父よ」と儚げに鳴いている姿は、とても同情を誘うわね。

ミノムシ
▲蓑虫いとあはれなり。

コメツキムシ(仰向けにすると、自ら跳ねて元に戻る虫)も哀れな虫よね。
その精神に信仰心を起こして、額を地面にすりつけて拝みながら歩き回っている。思いがけず、暗い所でコトコトと音を立てて拝みながら歩いている姿も面白い 。

ハエこそは、憎いものの中に入れるべき! これほど可愛げのないものはない!
人並に扱って目の敵にするほどの大きさではないけれど、秋なんかじゃ、どこにでも止まるし、顔なんかにも湿った足で止まるのよ! 
人の名前にハエという文字が入っているのも、全くゲンナリする。

夏の虫は、とても風情があるし可愛い。灯りを近くに引き寄せて物語などを読んでいるときに、本の上とかを飛び歩くのがなんともおかしくって。

アリはかなり憎たらしいけれど、ほんとに身軽で、水の上なんかでもどんどん歩くところはユニーク。

アリ
▲蟻はいとにくけれど、軽びいみじうて水の上などをただ歩みにありくこそをかしけれ。

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