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第25段◆すさまじきもの【後編】

  判るような判らないような

必読ものづくし日常

上手く詠めたと思った和歌を人に送ったものの、返事がない。想いを寄せる人から返事がないってのはどうしたものかしら。それなのに時機バッチリなタイミングで詠んで送った和歌にすら返事がないというのは、がっかりさせられる。

また人の出入りが多くて騒がしく、今をときめく権力者のところへ、時代に取り残された老人が、いくらヒマを持て余してるからって、昔ながらの時代遅れの和歌を詠んで送りつけて来るのもげんなりする。

郵便受け
▲よろしう詠みたりと思ふ歌を人の許に遣りたるに、返しせぬ。

ここぞという時に使おうと扇子を新調する際に、素敵な仕上がりを期待して趣味の良い人に作ってもらうけれど、引き渡しの日になって受け取ってみれば、なんじゃこりゃという絵をデザインしてたりするのも残念。

出産祝いや旅立ちの餞別を持ってきた使者に、心付けのお小遣いをあげないのもダメ。大したものでもないくす玉や卯槌(うづち・桃の木と五色の紐でつくったお守り)を配って歩く人にも、必ずお小遣いを渡すべきだ。
期待していなかったのに思いがけず貰えればそりゃ嬉しいだろう。逆に今回は必ず貰えると期待してワクワクしながら行ったのに貰えなければ、非常にがっかりするだろう。

うたた寝する女性
▲思ひかけぬことに得たるをば、いと興ありと思ふべし。…

婿を迎えたのに、四・五年経っても赤ん坊が生まれない家も非常に落胆モノだ。

既に成人した子供がたくさんいて、下手をすれば孫が這い這いしていてもおかしくない年齢の親が、昼寝をしている姿も見苦しい。
そばにいる子供にとって、親に昼寝なんてされてしまったら近付きようもないし、面白い気持ちはしないだろう。

大晦日の夜、寝ていたところから起き出してすぐ入浴するって行為には、怒りさえ覚える。

(※大晦日は除夜の鐘を撞いて煩悩を消し去るように、禁欲を良しとするのにも関わらず、入浴せねばならぬような行為に及んだので腹立たしいと解釈する説が有力)

大晦日に降る長雨。あと一日我慢してくれればよかったのに。

雨
▲師走の晦日の長雨。一日ばかりの精進解斎とやいふらむ。

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