細殿(ほそどの・廂の間を仕切った女房の部屋。この場合は西の廂の間。第8段の写真参照)に人が大勢いて、おしゃべりに興じているときのこと。こざっぱりした召使の男や貴族に仕える少年たちが、ステキなラッピングや袋に主人の衣服を包み、端から指貫(さしぬき・袴)の裾をくくる紐が覗き見えているものを担いで、弓矢やら盾やらも持ち運んでいる。
「どなたのものなの?」
って尋ねてみて、
「なんとか様のものでございます」
と膝をついて答えてくれる姿は良いものだ。
顔色を変えたり恥ずかしがって、
「知りません」
と答えたり、返事すらせず立ち去る姿は、とっても憎たらしい。
主殿司(とのもりづかさ・後宮の清掃や薪炭などを担当する女官)って、サイコーのキャリアよね。下級女官からすれば、これほど羨ましく思う役職はないわ。良い家柄のお嬢さんにも務めさせたい仕事ね。
若い美人がオシャレしてこの職を務めたなら、ましてカッコよく見えるはず。少し年齢を重ねて宮中の慣例やしきたりを把握し、我が物顔に仕事をこなしているような人もまた、主殿司に相応しくてイイ感じ 。
主殿司の中から可愛らしい顔をした子をひとり召し抱えて、季節に合ったコーディネートを施してあげて、裳(も・表着の上で腰に巻くもので後ろに裾を長く引く)や唐衣(からぎぬ・十二単の一番上に着る丈の短い衣)なんかも、流行のものを着せて、あちこち歩かせてみたいのよねー。
男の人だったら随身(天皇・摂関・大臣・近衛大将などの身辺警護にあたる武官)になるのがイイ。すんごいイケメンの若い男性貴族であっても、随身を連れていないのはがっかりする。
弁官(太政官の事務官僚)などは、非常にスゴイ官職だと思っているけれど、下襲(したがさね・アウターとインナーの間に着るトップス)の裾が短くて、随身を連れていないのがダメダメなのよね。