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第44段◆七月ばかりに

  夏の終わりのひとコマ

日常

七月ごろ、風が強く吹き、雨も騒がしいほどに本降りだった日は、おおかた結構涼しいので、扇を使うこともすっかり忘却。そんな日はちょっと汗臭い綿の薄衣を引き被って、昼寝するのがイイのよね~。

ワンちゃんのお昼寝
▲汗の香すこしかかへたる綿衣の薄きをいとよくひき着て、昼寝したるこそをかしけれ。

第45段◆にげなきもの

  今の感覚では「?」なものも

ものづくし

ふさわしくないもの。
身分の低い人の家の雪景色。そこに月明かりが射しこんで照らしている姿もブザマだ。
月夜に屋根のない牛車に出食わした時。そんな粗末な牛車なのに、立派な黄牛(あめうし・飴色の毛色の牛で他の牛よりも立派なものとされた)に牽かせているのは、ちぐはぐだ。

また年増の女が妊娠して大きなお腹で歩いている姿。若い夫を持っているというだけでも見苦しい上に、その夫が不倫して他の女のもとへ通っていると言って立腹しているようすは、ダブルで見苦しい 。

オッサンが寝ぼけている様子。髭面のオッサンが、椎の実を摘まんで噛んで食べる姿もみっともない。歯がなくなってしまった老女が、梅を食べて酸っぱさに顔をしかめているのも。
身分の低い人が、紅色の袴を穿いているのもねえ…近ごろは猫も杓子もそんな服装ばかりだそうだけれど。

妊婦
▲また老いたる女の腹高くてありく。

靱負の佐(ゆげいのすけ・宮廷諸門の警護職)の夜警姿。その狩衣(かりぎぬ・一般公家の日常着)姿も不審でアヤシイ。
おそろしげな赤い上着を着ているのも仰々しい。女房たちが住まう局の周辺をうろうろしているけれど、見つかれば軽蔑されるでしょうに。

それなのに「怪しい者はいないか」
なんて冗談混じりに尋ねてきたりして。
局に入って、お香の香りが染み込んだ几帳に袴なんかをテキトーに引っ掛けてある様子は、本当に不釣り合いである。

イケメンな若い男が、弾正の弼(だんじょうのひつ・警察の補佐官)に就任するのも、全く相応しくない。宮の中将(源頼定・みなもとのよりさだ。村上天皇の第四皇子でイケメンとして有名だった)などが任官していたころは、本当に残念だったでしょうにね。

警察官
▲靱負の佐の夜行姿。

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