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第60段◆よき家の中門あけて

  高貴な家の門前のワンシーン

評論

高貴な家の中門を開け放して、檳榔毛(びろうげ・第8段の写真参照)で白くて綺麗な牛車が、蘇枋(すおう・第35段の写真参照)色の簾を見せて、榻(しじ・写真参照)に立てかけてある様子は見事なものね。
五位や六位などの者が、下襲(したがさね・アウターとインナーの間に着るトップス)の裾を帯に挟み、真っ白な笏(しゃく・束帯の時に右手に持つ細長い薄板)の上に扇を置いたりして、あちらこちらと行き交い、また立派な身なりをして矢入れの容器を背負った随身(天皇・摂関・大臣・近衛大将などの 身辺警護にあたる武官)が出入りしているのも場に相応しい。

台所で働くこざっぱりとした女が、家から出てきて、
「なんとか様のお供の方はいますか」
などと言っている光景も趣きがあるわね。

榻
▲榻にうち掛けたるこそめでたけれ。

第61段◆滝は

  滝にもいろいろあるものです

ものづくし

滝は音無の滝(京都市左京区か?)がステキ。
布留の滝(桃尾の滝・奈良県天理市)は、後嵯峨法皇が見物におでましになられたそうよ。素晴らしいわよね。
那智の滝(和歌山県那智勝浦町)は、熊野にあるっていうのがやっぱりスゴイのよ。
轟の滝(場所は不詳)は、どれだけやかましい音を立てる恐ろしい滝なのかしら。

画像引用:wikipedia/wakai(http://urx3.nu/xlKn)

桃尾の滝
▲布留の滝は法皇の御覧じにおはしけむこそめでたけれ。

第62段◆河は

  清少納言イチオシの河川

ものづくし

川といえば飛鳥川(あすかがわ・奈良県)ね。淵がどこで瀬がどこだという定めがないらしいの。一体どんな川なのかと考えただけで情緒たっぷり。
大井川(大堰川・京都市右京区)、音無川(和歌山県田辺市)、七瀬川(京都市伏見区)

耳敏川(みみとがわ・京都市上京区)。耳ざとく、また何事を差し出がましく聞き出したのだろうかと感じられてユニーク。

玉星川(東北地方か?)や細谷川(ほそたにがわ・岡山県岡山市)、いつぬき川(糸貫川・岐阜県本巣市)、沢田川(さわだがわ・京都府木津川市)などは、催馬楽(さいばら・古代歌謡)なんかを思い出させるわ。

名取川(なとりがわ・宮城県名取市)は、どんな名評判を取ったの?って尋ねてみたくなる。
吉野川(奈良県吉野町)。

天の河原(天野川・大阪府交野市)は、
「狩り暮らしたなばたつめに宿からむ天の河原に我は来にけり」
(※狩りをしていたら日が暮れてしまったので今夜は織姫に宿を借りよう。 いつの間にか天の河原に来てしまったようだ)
と在原業平が詠んだ川なだけに、惹かれるわあ。

画像引用:奈良県景観・自然環境課(http://www.pref.nara.jp/39050.htm)

飛鳥川
▲河は飛鳥川。淵瀬も定めなく、いかならむとあはれなり。

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