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第65段◆里は

  風情ある名前が並びます

ものづくし

里は逢坂の里(おうさか・滋賀県大津市)がイイ名前よね。
ながめの里(場所は不詳)。寝覚の里(いざめ・名古屋市緑区説または岐阜県池田町説がある)。人妻の里(場所は未詳)。頼めの里(長野県塩尻市と辰野町)。夕日の里(場所は不詳)も良い。

妻取りの里は、誰かに妻を盗られてしまったのかしら。それとも自分が人妻を奪い盗ったのかしら。どっちにしても面白い。
伏見の里(京都市伏見区)。朝顔の里(場所は不詳)

妻を盗られた男
▲妻取りの里、人に取られたるにやあらむ…

第66段◆草は

  ただの草にも面白い謂れが

ものづくし自然

草は菖蒲。菰(マコモ)
葵はとてもステキ。神代の時代から葵祭りの髪飾りになっているのが素晴らしいわね。葉っぱの形自体も風趣たっぷり。

オモダカ(写真参照)は名前が愉快よね。面高っていうくらいだから、顔を高くして思い上っているみたいに思えちゃうでしょ?
ミクリ。ヒルムシロ。苔。雪の間から萌え出ずる若草。コダニ(ツタのことか?)
カタバミは綾織物の紋様にもなっているから、他の草よりもワンランク上よね。

オモダカ
▲沢潟は名のをかしきなり。心あがりしたらむと思ふに。

あやう草(不詳)は、崖のような場所に生えているそうで、まったく頼りがいのない危なっかしい草ね。
いつまで草(不詳)は、またもや儚くて惹かれる名前の草。崖よりも崩れやすくて危なっかしいネーミングよね。漆喰で塗り固めた壁などに生えることはできないのだろうと思われる点がマイナスポイント。
ことなし草(不詳)は、「事を為す」って言うくらいだから、願い事を叶えてくれる草なのかしら。面白いわね~。

忍ぶ草(シノブ)はとても風情がある。道芝(道ばたに生えている雑草)はとてもユニークな命名ね。チガヤ(写真参照)の花穂も良い感じ。ヨモギも非常にステキ。

山菅(山のスゲ)。ヒカゲノカズラ。山藍。ハマユウ。葛。笹。アオツヅラフジ。ナズナ。苗。浅茅(あさじ・丈の低いチガヤ)もとても素晴らしい。

チガヤ
▲茅花もをかし。

蓮の葉というのは、そのほかのどの草よりも優れて立派。「妙法蓮華経」の名に蓮の字が入っているし、蓮の花は仏前にお供えするし、蓮の実は数珠の玉になるし、念仏を唱えて極楽に往生する縁とするのに欠かせない草だからね。
それに他の花が咲かない初夏の時季に、緑色の池水に、紅く蓮の花が咲いている姿は、非常に素晴らしい。漢詩でも翠翁紅(すいおうこう)という言葉で登場するし。

タチアオイは日の射す向きに従って花の向きもそちらに傾くのが、草木とは思えない心がけで感心しちゃう。
さしも草(ヨモギ)。ヤエムグラ。
月草(ツユクサ・写真参照)は染めてもすぐ色落ちすることから、心変わりしやすい比喩になっているのが、ちょっと嫌なところよね。

ツユクサ
▲つき草うつろひやすなるこそうたてあれ。

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