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第79段◆あぢきなきもの

  思うようにならないこと

ものづくし

思うようにならず、おもしろくないもの。

自ら決心して宮仕えに出た人が、鬱っぽくなって、出仕を煩わしく思っている様子。
養子の顔がブサイクなのも、自ら選択した結果なのにがっかりしてそう。
結婚する気がない人を無理に婿にして結婚した結果、
「なんか思ってたのとチガウ」
と悔やむ人。

落ち込む女性
▲しぶしぶに思ひたる人を強いて婿取りて、思ふさまならずと嘆く。

第80段◆心地よげなるもの

  当時はそうだったのでしょうね

ものづくし

得意げで満足そうなもの。

卯杖(うづえ・新年に用いる邪気を払うための杖)を捧げ持つ人。
御神楽(みかぐら・宮中でおこなわれる神楽)の人長(にんじょう・舞人の長であり進行役も兼ねる人)
御霊会(ごりょうえ・疫神や死者の怨霊などを鎮めなだめるために行う祭り)の時、旗を持っている人。

画像引用:國學院大學(http://pr.kokugakuin.ac.jp/event_extramural/2014/10/11/203410/)

人長
▲神楽の人長。

第81段◆御仏名のまたの日

  宮廷栄華のワンシーン

宮廷サロン

御仏名(おぶつみょう・12月中旬に行われる法要)の翌日。
一条天皇が地獄絵の屏風を持って来させて、中宮定子にお見せになられた。
その絵といったら、超絶恐ろしくて、私はもう限界。
「これ、見てみなさい。ほら、見てごらんって」
帝はそうおっしゃるけれど、私は、
「絶対イヤですうううう」
って言って、怖さのあまり、小部屋に隠れて寝てしまったのよ。

雨がざあざあ降るし、暇だったので、帝は殿上人(てんじょうびと・五位以上の人および六位の蔵人)を上の御局(うえのみつぼね・中宮や女御の控えの部屋)にお召しになって、管弦の遊びの会を開かれたのね。

源道方(みなもとのみちかた)の少納言の奏でる琵琶は、格別の腕前。
源済政(みなもとのなりまさ)が箏の琴で、平行義(たいらのゆきよし)が笛、源経房(みなもとのつねふさ)の中将が笙の笛など、名手ぞろいでスゴイ!

ひととおり演奏し、琵琶を弾き終わったタイミングで、大納言の藤原伊周(ふじわらのこれちか・中宮定子の兄)が、
「琵琶声やんで、物語りせむとすること遅し」
(※出典は白居易の長編叙事詩「琵琶行」の一節である「琵琶声停欲語遅」  ◆琵琶の音が鳴りやんだというのに語ろうにも返事がない)
と吟じられたので、隠れて横になっていた私も起き出して来て、
「やっぱり地獄絵は恐ろしいですけど、ステキな演奏に惹かれる心だけはどうしようもありません」
と言って、皆に笑われちゃった。

地獄(?)
▲地獄絵の御屏風とりわたして、宮に御覧ぜさせたてまつらせたまふ。

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