▲若くてよろしき男の下衆女の名、呼びなれて言ひたるこそにくけれ。
若くてそれなりに身分が高い男性が、身分の低い女性の名前を、馴れ馴れしく呼ぶようすは憎たらしい。彼女の名前を知っておきながら、
「何だっけかなあ」
というふうに、名前の一部をうろ覚えであるかのように呼んでいる姿はイイ感じなんだけれど。
女性を呼び出すときは、宮仕えする女性の部屋に立ち寄って、夜間などは宜しくないだろうが、宮中ならば主殿司(とのもづかさ・宮中の雑務担当)が居るので、主殿司に呼び出しを依頼し、宮中以外の場所ならば侍所(さむらいどころ・親王家や摂関家などにあり、従者が控えている場所)などにいる人を連れて行って呼び出しを頼めば良い。
自分の声で呼び出したら、声で誰が呼び出したかバレちゃうでしょ。
もちろん召使いや幼女なんかは、自分で名前を呼んでも構わないと思うんだけれど。
若い人や子供たちは、太っているのが良いわね。受領(ずりょう・地方諸国の長官。いわば県知事)のような大人たちも、ふくよかなほうがステキだ。
幼児がおかしな弓だとかムチみたいなものを振り上げて遊んでいる姿は、超可愛い。牛車を止めて、車内に抱き入れて眺めていたいって思うくらいにね。
また、そうやって牛車で進んで行った時に、焚き物の強い香りが香ってくるのも凄く風情があるわ。